ジャーナルクラブでの論文。クラブといっても参加者2人である。同位体関係の論文と植物生理生態関係に限定しているので、関心のある人間がこの研究室には少ない。ほとんどの人間は生化学レベルまたは分子生物学的レベルで研究をやっている人間なので。

ということで、Affek et al.を2人で読んだ。
葉っぱからの、二酸化炭素の酸素同位体と土壌からの二酸化炭素の酸素同位体比を測定して、その値を用いて、AutotrophicとHeterotrophic呼吸の分離が可能かどうかという、フラックス測定の手法に関するバックグラウンドから派生した研究。

葉っぱからの酸素同位体フラックスを推定するのに、どのパラメータを持ちいればよいのか。この酸素同位体フラックスモデル上のおもなパラメータは大気の二酸化炭素と葉内の二酸化炭素の酸素同位体分別比で、この値に影響を与えている葉内水分の酸素同位体比のばらつきがどの制限要因で形成されているのか。

葉っぱに入ってきて出て行く二酸化炭素(retrodiffusional flux)の酸素と葉っぱの中にある水の酸素の交換がどの要因によって制限されているか。
この現象の主制限要因としての、Carbonic Anhydraseの活性と光合成に関するパラメーターと、水への溶解に関する平衡定数、葉緑体の表面の二酸化炭素濃度などを測定、解析。
葉内の平衡定数が変化したときの酸素同位体フラックスの葉内でのばらつきの変化をシミュレーションして、その葉全体での同位体フラックスの推定の誤差の議論。
結果、C4植物では、平衡定数が変化しても最大10%であり、C3では8%程度。いくら葉内で同位体フラックスに大きなばらつきがあっても(平衡定数が大きいとき)全体的な誤差は‘なんらかの’キャンセレーションファクターによって誤差はそれほど大きくないということ。
で、結果は、酸素同位体フラックスを推定するときには、葉っぱのある部分を用いるのではなく、全体的な値を用いなければならないということ。

不明箇所
・いまいち不明だったのが、呼吸成分の二酸化炭素も平衡による分別が起こっているのかどうかという説明が全くないので若干困惑。
でもモデルでは純同化速度を用いているので呼吸もこれに含まれているとしていいのかなぁ?呼吸で生産された二酸化炭素の葉内水との平衡による分別もretrodiffusionalで、葉っぱから出て行く二酸化炭素と同じようなプロセスが起きていると、おそらく考えていいのだろう…。
・あと、このとうもろこしのDevelopmental stageが不明。成長が飽和しているのか成長途中なのかで、葉内のガス交換パラメーターや酵素活性も変化するかもしれない。ディスカッションのところで、葉っぱの先端部分でCi値と気孔コンダクタンスの値が大きいが、同化速度は葉のどの部分でもほぼ一定であるということに関して、‘生産性の最適化’などという表現を用いていた。賛成できませぬ。水損失しているよ。どんな生育条件かどうかしらないけど。水利用という視点でなんかおかしい気がするし、あと、‘生産性の最適化’というならば、Ciを思いっきりつかったほうが効率的だ。
だから、私は、葉の構造上、物理的性質の最適化というか安定化という表現のほうがあったているのではないかと思っている。